藻類とは、水棲の光合成生物の総称であり、水棲の光合成微生物のことを微細藻類と言う。真核の微細藻類は細胞内に多量の脂質を蓄積するため、バイオディーゼルの供給源として期待されている。一方でバイオディーゼルの高い生産コストを低下させるため、さまざまな藻類における分子育種が盛んに進められ油脂生産効率の高い高機能藻類の構築を目指している。我々もナンノクロロプシスという最も油脂を蓄積する藻類の一種において非常に高い変異導入効率を示すゲノム編集システムを開発した(参考文献1, 図1)。
これに加えて藻類細胞を低コストで大量に得るためには屋外培養が必須であるが、遺伝子組換え生物に対しては厳格な使用規制があるため、実用的な高機能藻類の構築には、藻類細胞の内部から外来遺伝子を除去するシステムが必要となる。我々は出芽酵母のセントロメア・複製起点様配列を持たせたゲノム編集ベクターを開発した(図2)。このゲノム編集ベクターをナンノクロロプシスに導入し、遺伝子改変後に細胞から除去することに成功し、最終的に外来遺伝子が残らないナンノクロロプシスにおけるゲノム編集システムの構築に成功した(参考文献2)。現在はナンノクロロプシスに加えてユーグレナ、クラミドモナスという藻類のゲノム編集システムの開発も進めている。
参考文献
1: Kurita, T., Moroi, K., Iwai, M., Okazaki, K., Shimizu, S., Nomura, S., Saito, F., Maeda, S., Takami, A., Sakamoto, A., Ohta, H., Sakuma*, T., and Yamamoto*, T. Genes to Cells, 25, 695-702, 2020
2: Kurita, T., Iwai, M., Moroi, K., Okazaki, K., Nomura, S., Saito, F., Maeda, S., Takami, A., Sakamoto, A., Ohta, H., Sakuma, T., and Yamamoto*, T. Scientific Reports, 12(1), 2480, 2022